公開日記

その名の通りです

日記

19/11/08

ラヴェルの『海原の小舟』、世界が静止したかと思えるほどに美しい音楽だ。流麗な音の奔流のほとりで、あまりの美しさに、僕はため息をこぼす。そうかと思うと、音の流れは崩れ出す。制止した世界が音を立てて崩れ始める。そして暗闇へと落ちていく。やがて…

19/11/06-07 : 静寂を歩くニーチェ

冬の朝を歩く。空の色が水でとかされた絵の具のようで、現実めいていない。見つめていると、浮遊させる引力にひき付けられる心地がした。 公園を通る。木の葉が黄金に照らされており、大きな影が公園を覆っている。それが不思議な対象を成しながらも調和して…

19/11/05

ショパンの音楽を詩情豊かに弾こうとすることは間違いだ。むしろ彼の音楽の魅力は、その冷たさにある。ショパンの美学的な冷たさ。彼の音楽は氷細工のように繊細で、壊れやすく、そして冷たい。あまりにも熱した手つきでは、それは溶けてしまう。ショパンの…

19/11/03-04 : 山に逃れるツァラトゥストラ

先日、僕は見知らぬ夜道を歩いていた。辺りには人気がなく、街頭は僅かにしかなかった。顔を上げると、オリオン座が見えた。季節は既に冬だった。星々は点々と煌めき、目下に広がる人々の生活に対抗していた。夜風は冷たく僕の肌を刺した。そして、それがと…

19/11/01 : mm

人は時に、突き放すべき他者を突き放し、進んで他者を傷つける必要がある。そうでなければ、その人は自分が最も幸せにしたい人を幸せにすることも出来ないだろう。そして、場合によっては、それが現前するそれ以外の他者を最も傷つけない方法なのである。 優…

19/10/31

音楽を聴きながら人混みの中を歩く。ここにいる人間は誰も僕のことを知らない。人混みに流されながら、僕はとても孤独を感じている。そして、どういうわけか、それがとても心地いい。 僕は無心になって、あてもなく辺りを彷徨う。もう数年前から、何度もこれ…

19/10/30 : エピクロスの園

「隠れて生きよ」と、エピクロスは言った。人前に出れば、人は嫉妬を受け、羨望される。または自分が誰かを嫉妬し、羨望する。それは自分を苦しめ、また他者をも苦しめる。自己と他者との違いに苛まれ、その差異を比較することで、時には劣等感に苦しめられ…

19/10/29

"死からその珍しさを取り除こう。死に親しみ、馴れ、何よりもしばしば死を念頭に置くことにしよう。いつも死を我々の想像のうちに、しかもあらゆる様相において描こう。" (モンテーニュ『エセー』より) 人間関係において、僕はよく現状維持というものを強く…

19/10/26-28 : 哲学、音楽、ハイネの詩

哲学をするとはいかにして死ぬかを学ぶということである。人は哲学を通して死の準備を始める。そういう意味では、哲学は何よりも先ずはじめに「死の倫理学」でなければならない。 サムソン・フランソワの弾いたドビュッシーのピアノ曲を聴く。素晴らしい。本…

19/10/25 : 存在しない青春

僕達は皆、存在しない青春を求めている。そして皆、その埋め合わせをしようとしている。誰もが失われた子供時代を求めている。誰もが失われた家庭を求めている。誰もが失われた過去の可能性が帰ってくることを追い求めているのである。 特に思い入れがあるわ…

19/10/24 : 来たるべき時代のために

僕達は今、大いなる反動の時代を生きている。今や既存の諸価値は崩れ、もはや多くの人がそれを信じることが出来なくなっている。現代の悲劇とは、それでも今なお、もはや僕達の信じることの出来ない価値観は変わらずにそこにあり続け、僕達の無意識に存在し…

19/10/21

僕は感情が恐ろしい。他人の感情の動きが恐ろしい。しかし何より、それによって自分の感情の乱れることが恐ろしい。感情が乱れれば、僕は正確な判断力を失う。正確さを失えば、僕は道を踏み間違えて、取り返しのつかないあやまちを犯してしまうかもしれない…

19/10/19

正しさを求める人は皆和解を求める。そして和解を求めれば求めるほど、正しさはその人を追い詰めていく。 僕は自分の子供っぽいところに非常に強いコンプレックスを感じ続けていた。しかし、一時期はそれが治ったような気もしていた。ただ、それもどうやら思…

19/10/18 : アリアドネ

"愛しのアリアドネへ、ディオニュソスより" 音楽は人を救わない。むしろ、音楽は人を孤独の中に置き去りにする。「君は一人じゃない」と慰めを歌う音楽はまやかしでしかない。真に美しい音楽は、僕達に孤独の現実を突きつけ、そして、僕達にそれを担うことを…

19/10/14 : 今、希望とは

家庭的なものへの憧れ、というものが僕にはある。 今でも時折考えることがある。今まで自分が掲げてきた野心や夢、志を全部捨てて、初めからやり直すのも悪くないのではないか。 家族を持ちたいという気持ちがやはりどこかにある。勉強し直して、いい大学に…

19/10/13

男女の関係の帰結。僕はそれが必ずしも肉体的なものだと思わない。もしそうだとしたら、僕が誰かと積み上げてきた友情は、皆その「肉体的なもの」のためになってしまうからだ。 これは僕の個人的な話になるが、僕は本当に自分が心に決めた相手でなければ、自…

19/10/12

科学の発展が著しい現代。しかし、もしその「科学的」か価値観が、実はどこまでも「宗教的」であるとしたら、どうだろう。 科学の発展は既成の宗教的な価値観の崩壊と反比例している。キリスト教の教えが廃れるほど、近代以降の科学的文明は発展を重ねてきた…

19/10/11

積み上げては崩れ、また同じものを積み上げてはまた崩れる。何度もそれを繰り返す。もし人生がその繰り返しでしかないなら、僕にはそもそも生きることが耐えられない。 虚しい、あまりにも虚しい。 しかし違う。人生は決して同じことを繰り返すことが出来な…

19/10/08

誰かを前にする限り、人は皆他者の眼差しを意識する。どれだけ独白的であろうと、誰かの前で話す限り、それを聞く他者の存在を意識して話をする。存在しない「他者の反応」を想定し、それに傷つけられるのを恐れ、自分自身の行動を「管理」する。僕達は自分…

19/10/06-07 : シュミラクルとパラダイム・シフト

人は常に自分自身の過去を生き直す。 当時経験した出来事を、ある日ふと思い出した時、そこには当時は感じなかったような感情、考えなどが思い浮かぶ。その時、その人は自分の過去を思い出すが、しかし同時に、その人はその当時と同じ感覚で自分の過去を眺め…

19/10/05

人は皆、自分自身を模倣する。自分の過去と現在から「こうあって欲しい自分自身」の像を作り出し、それにこれからの自分自身を当てはめようとすることで、偽りの自己を模倣し、演じようとするのだ。 僕達は絶えず誤解する。人の目の前にはひとつの事実が存在…

19/10/04

こんはなずではなかった。そう思うことがよくある。 最近、新しくカフェ兼バーでアルバイトを始めた。言葉を選ばず、端的に自分の気持ちを言い表すならば、楽しい。いくつかの接客業を試みたことがあるが、その中でも一番のやりやすさを感じている。 できる…

19/10/02

多かれ少なかれ、その人の顔にはその人がこれまでの人生で体験してきた出来事が現れている。顔色を読むということは、その人の過去と現在を読むということだ。 『ドリアン・グレイの肖像』は僕の愛読書の一つである。魅惑の美青年ドリアン・グレイは、何年、…

19/10/01

生まれながらの悪人というものはいない。大抵の悪人は、皆悪人にならざるを得なかったというところに、彼らの不幸が存在する。 人間の無意識とは、他者からの影響によって形成されるものである。その人の常識には、そのままその人が今日まで過ごしてきた環境…

19/09/30

ついに自作の曲をサウンドクラウドにアップロードした。といっても、ギターで弾き語りしたものを、僕のスマートフォンした音源だから、音質も悪ければ、完成度も低いのだけれど。いつかちゃんとした状態で録音出来たら、と思っている。 僕は宣伝というものを…

19/09/29

朝に目を覚ます時、僕が一日の中で一番嫌いな時間帯。目覚めと共に、まるで心臓をえぐり取られたかのような痛みが胸の辺りを広がっていく。それがとても苦しい。今にも胸元が破裂して、天井に向かって血が飛び散るのではないかと思うほどだ。 それから何とか…

19/09/28

子供っぽい人が好きだ、と言うと、少し語弊があるかもしれない。 一定の人達は、他人の愛情を得るために、わざと無邪気に、愛想良く、子供らしく振る舞うものだ。または、他人に自分の汚い部分を受け入れて欲しいから、わざと子供のように可愛らしく振る舞う…

19/09/27

「恋は盲目」と、人はよく言う。しかし実際、人が恋に盲目になっている時、その人は、そのように盲目な自分を冷静に認識しているものである。つまり、恋をするとき、人は「盲目な自分」を、盲目にならずに理解することが出来るのだ。 そんな自分がおかしいと…

19/09/25 : アダージェット

ミラン・クンデラの小説はどれも好きだが、中でもやはり、彼の小説で初めて読んだ『存在の耐えられない軽さ』には強い思い入れがある。主人公トマーシュとその恋人テレザの恋愛模様を軸に話を展開しながら、同時にニーチェの永劫回帰等の哲学思想を考察する…

19/09/24

"哲学は、別の関心事を持つ国家や宗教の役に立たない。それはいかなる既成の権力の役にも立たない。[そうではなくて、]哲学は悲しませるのに役立つのだ。誰も悲しませず、誰も妨げない哲学など哲学ではない。哲学は愚劣を防ぐのに役立ち、愚劣をある恥ずべき…